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アメリカのウォールストリートジャーナル(日本版2013年3月6日付)に掲載された「在宅勤務廃止」に関する内容の記事が、アメリカで大きな論争を巻き起こして随分経った。当時日本ではノマドワーカーという新しい働き方の登場もあり、アメリカ国内の話でありながらも日本で大きな反響があった。記事にはインターネット大手、米Yahoo!のマリッサ・メイヤー最高経営責任者(CEO)が、在宅勤務の全従業員に対して、オフィス勤務に移行するよう指示する内部メールを人事担当者名で送信したと書かれていた。マリッサ・メイヤー氏といえば、Googleからリクルートされ、yahooでは精力的に社内環境の改善を推進し、昼食無料をはじめとする様々な社員優遇策を導入していた人物だ。今回新たに「コミュニケーションの重要性」の視点から決断された「在宅勤務全面禁止」の宣言は社内外に大きな衝撃を与えた。在宅勤務(テレワーク)の普及が進むアメリカの中で、この決断はどのような意味を持ったのだろうか。

 

マリッサ・メイヤー氏の主張

彼女の主張では、オフィスとの距離が、意思疎通の連携不足を生み、仕事の質やスピードが低下するというものだった。早い話が「全員が席を並べて仕事をするのが一番!」というお話。日本で家族経営スタイルを貫く経営者たちが、ウンウンうなずきながら聞いてしまいそうな話である。メイヤー氏は、今後実際にオフィスに出勤できないのであれば、辞めるか引越をするなりの対策を講じて欲しいと社員に要望した。この決断の背景には、在宅勤務者たちのマネジメントが予想していたよりもうまくいっていない現状がある。つまり、いかに優秀な人材であったとしても結果が見えてこない、もっといえば、結局仕事してるのかしてないのか、生かしきれているのかどうなのか、今イチ判断できないということだ。外部から招かれた彼女自身が、トップとして一番そう感じてしまったのかもしれない。とにかく、これを機に、アメリカ全土で「在宅勤務は真の仕事とはいえない」と主張する派と「在宅勤務が正しく機能すれば、出社するよりも大きな成果を生む!」と主張する派との2大論争に発展した。ちなみに余談だが、マリッサ・メイヤーCEOは、かなりの知的美人。アメリカの人気海外ドラマシリーズ「ライ・トゥ・ミー」のジリアン・フォスター博士役ケリー・ウィリアムズに似てて、なんとなくファンになった。

話を戻します。 ←全員同意

 

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アメリカ在宅勤務の実態

僕自身はアメリカで働いた経験もないし、極東アジアの島国で資料を読みあさるくらいしかできないわけだけど、ちょうどアメリカ合衆国国勢調査局がまとめた在宅勤務に関するレポートに出会ったので紹介する。それによると2010年の国勢調査では1340万人が、少なくとも1週間に1日以上在宅勤務をしている。これは全米就業人口の9.4%にあたる。1997年の6.97%から比べると35%の増加であり、実はアメリカ政府はかねてから、在宅勤務を推進する流れがある。

在宅勤務推進の狙いとは何か

※これは9.11以降重要視されはじめた。

長引くガソリン価格の高騰も手伝い、在宅勤務推進を後押ししているアメリカ政府の思惑がある。アメリカは長年、都市部の渋滞問題に悩まされてきた。特に朝と夕方の通勤・帰宅ラッシュは社会問題化している。そんな社会にあって、近年のインターネット社会の到来はアメリカ社会にとっては朗報と言える。パソコン一台あればフリーアドレスで仕事ができる魅力は、急速に受け入れられていった。もともと国土の広いアメリカでは、遠方のクライアントと仕事をすることが文化として根付いていた。そんな背景もあり、企業の個人ブースで働くことと在宅で働くことに大きな温度差は生まれなかったのであろう。

 

論争に見る個人的見解

この論争には個人的に“2つの視点”が交差しているのではないかと思っている。一つ目は在宅勤務を選ぶことで、より創造的で生産的な仕事を行えるのかどうかという視点。これは、最初に話題となったYahooの議論では真っ向から対立されている部分だろう。メイヤー氏はあくまで「会社の売り上げ」に特化した議論をしている。そして、アメリカ政府も同様に、在宅勤務がより創造的で生産的なものであるならば、多くの社会的課題も含めてプラス材料が多いと思っている。一企業の話ではなく、アメリカ全体としては在宅ワークという選択肢を増やすことで、社会全体が活性化するのではないか、という思惑があり、また、米yahooにとっては、yahooにとって有益な選択とは何かについてを模索した結果だ。

そして二つ目は、近年耳にすることが増えたWLB(ワークライフバランス、仕事と生活の調和)という視点。これは、一つ目の要素も多分に含んでいる話だが、WLBで語られる中には「今行っている仕事は、はたしてオフィスの中でしか、できないのか」という働き方そのものの論争が含まれていることを考えたい。オフィスのありかたそのものを人生観をひっくるめて根底から見直す視点だ。損得の前に、人にとって働きやすい環境を選択できる、または作り出せることの重要性を議論したいという部分である。

 

まとめ

社内でしかできない仕事は何か?そんな考え方は「在宅勤務」という選択がなければ、議題にもあがらなかったかもしれない。この論争でみえてきた今後の課題は、在宅勤務を考えることと同時に社内勤務のあり方についても積極的に考えていかなければないないという点だ。最低でもその二つの働き方をどう連携していくかが重要となっていきだろう。労働環境というテーマは日本でも連日ニュースで取り上げられている。長時間労働、サービス残業、過労死、アルバイトに与える責任の度合い…など、その大半は痛ましいものだ。日本人がgoogleやスターバックスなどの外資系企業や六本木にあるIT企業の職場風景をテレビで観て、うらやましく思う気持ちは「働く環境」や「働き方」がストレスフリーで輝いているように見えるからだろう。在宅勤務が良いか悪いか、という議論ではなく、働く場所や働き方がもっと議論され、選択肢が増えるような社会になれば、企業にとっても、働く人にとっても良い仕事に繋がるように思う。その為には、自分自身がどう生産的な人材であるかを、きちんと伝えられるかどうかが、とても重要なんだろう。

社会にとっては選択肢が増えることのメリットは大きい。そして企業にとっては、戦略として在宅ワークが有効かどうかを、議論する転換期に来ている。より優秀な人材を確保するひとつの戦略として、在宅ワークの導入が是か非か。アナタの会社は「在宅」制度、どう思いますか?

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