「それは載せないで!」そのひと言で採用成功が遠ざかる!?

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求人広告ライターの仕事に携わってかれこれ10年以上が経ちますが、制作する前に掲載企業からよく「それは載せないで欲しい」との言われることがよくあります。つまり「その情報はデメリットだから求人広告には載せたくない」って話です。

良いことはより良く伝え、悪いところはできる限り見えないように…。何も求人広告に限った話ではないと思います。求人広告に限らず、会社パンフレット制作やホームページ制作でもよくある要望かもしれません。

私は長年、この「企業が載せたくない情報」について、求人広告ライターの立場としてじっくり人事担当者と話をしようと試みてきました。結論を先に述べれば、載せたくない情報こそ、載せるべきだと伝えてきました。採用を成功させるためには、実は企業の魅力を掘り下げることと並行して、デメリット情報も掘り下げていくことが重要なのです。

「え?何いってんの?」載せないほうがいいんじゃない?思われるかもしれません。でもこれこそ、載せたくない情報こそが、採用成功には必須なのです。

 

隠すことは「ハイリスク・ノーリターン」

人材採用全般において、隠し事や湾曲した情報はまったく意味を成しません。求人広告の情報だけではなく、面接の際も同じです。これは力強く断言しておきます。そりゃそうなんです。だって、人材採用(求人広告)のターゲットは「一緒に働く仲間」です。つまり従業員を募集するんです。内部に招き入れる社員なわけですから、隠したところで入社すればスグにバレます。すぐバレることを隠す、あるいは誤魔化すわけですから、入社早々にその従業員は会社に対して不信を抱きます。採用シーンとしては良いスタートとは言えません。

そんな採用をして、その後どうなるかといえば、道は2つしかありません。

「我慢して働くか」「退職する」かです。

結局のところ、悪い部分を隠して採用しても採用者はスグに辞めます。転職が一般化している若い世代であればあるほど、だいたい辞めます。辞めてしまえば、それに使った採用費と貴重な時間はすべて無駄になるわけです。何ひとつ良いことはありません。我慢して働きながらもなんとなく定着していくこともあるとは思います。でも、やがて転職します。そんなモチベーションの従業員ばかり増えて、会社の戦略は大丈夫でしょうか。人員は揃ったのに、なんだか思ったほどの結果がでない。そんな時なことがあったら、その背景には今回の話が絡んでいるかもしれません。

でも、実はこの話、最初はなかなか反発されます。気持ちはわかります。そりゃ、悪い話も隠さず広告に載せるなんて、無謀と思う方もいると思います。

ただ、考えてみてください。世界中探しても完ぺきな会社はありません。多かれ少なかれ企業は課題がいつも存在します。世界で一番働きたいといわれるGoogleだって退職者はいるんです。良いことばかりの企業広告の方がむしろ気持ち悪いかもしれません。

求人広告で求められるのは採用のマッチングです。マッチングを求めるには企業は常に等身大の姿で臨む必要があります。

 

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悪い(隠したい)部分も実は悪い話ではない。

その企業が隠したい部分、つまり「課題」とはいったい何でしょうか。「特にない!うちは精一杯やってる!」という社長さんもいらっしゃると思います。求人の視点で簡単にいってしまえば、採用の課題は「離職理由」から導くことができます。

給与が低い、待遇が悪い、就業環境が悪い…それらは退職者たちの企業への最期のアドバイスです。離職理由は次の採用に繋がるひとつのデータとしては参考になります。改善できることであればスグにでも改善した方がいいわけですが…、この話を続けていくと、だいたいの社長さんは渋い顔をしはじめますので、ちょっと補足させてください。

私がこれからお話ししていきたいのは、採用のマッチングには嘘や誤魔化しは必要ないということです。正しい情報を提供しなかったばかりに、ミスマッチの人材を生み、それがやがて退職していく時には「給与が低い」「待遇が悪い」「就業環境が悪い」「会社が悪い」なんて残念な言葉ばかりを並べて辞めていくのです。この長引く不況化のなかで、精一杯経営しているにも関わらず、残念な理由で辞めていく従業員たち…。経営者としてはいろいろ思う所はあるのは重々承知しているつもりです。

従業員たちがより良く長く健康に安全に不安なく仕事をしていけるように、会社を変えていくことは重要です。しかし、今回は少し視点を変え、採用ターゲットのマッチング精度を上げるために、悪い話も掲載していきましょうという提案をしたいと思います。

 

採用ターゲットを導く。

採用ターゲットの設定は、単に条件面でのすり合わせではありません。ターゲットがどんな生活を望み、将来どうなりたいかを想像していくことで、企業側が用意するべき条件や給与・環境が導かれ、採用のマッチングを生むのです。

給与が低いとか待遇が悪いとか、そういった話は個人差があります。もちろん、無視はできません。社長の気持ちだけで会社を運営していてはブラック企業の批判を浴びかねませんから、従業員へのリサーチや時代背景も考慮する必要はありますが、誰だってより多い収入が欲しいですし、より快適な待遇を欲しがります。私が重要視したいのが、欲しいターゲット層にとっての一番の魅力はどこか。一番気にする待遇や環境は何か。そこを考えていきましょう!ということにあります。

 

希望に合う人材の為に「制度」を変えられるか。

あるエピソードをご紹介しましょう。とある某営業会社での求人募集成功の事例です。この会社は法人向けのネットサービスを販売している会社です。売上の横ばいを解消するために、新しく業界経験のある社員を採用したいと考えていました。しかし、正直長引く不況のあおりもあり、それほど高い水準の給与は出せない。平社員並みの給与で働いて欲しいのだが、それでも経験者が欲しい。そんな状態で長く採用が停滞していました。そこへある時、とびっきりの販売実績を過去に持つ、業界経験者からの応募がありました。面接では、給与水準も会社の提示する額でかまわないと給与面も問題なくクリアしました。会社としては長く待ち望んだ人材なわけです。ただ、ひとつだけ応募者側から条件がありました。家庭の事情で時短勤務を希望していたのです。

会社としては何としてもこの人材が欲しい。ただ、時短勤務などこれまで誰もそんな働き方をしたことがない。時短勤務を採用するには制度の見直しや給与体系・評価制度の見直しも必要となってくる。新しい取り組みが会社として良い影響となるのか悪い影響となるのか。経営者としては悩むところでした。結果として会社は、思い切って新しい時短勤務制度を実験的に導入。その後、会社は過去最高の売上を達成することになります。後日談は続きます。会社はそれからも時短勤務社員を増員していきます。子育て中のママさんや親の介護での時短希望者など、優秀な経験者を多く獲得することに成功しました。

いろいろ話を簡略化させて書きましたが、ここで伝えたいことはひとつ。

会社が欲しい人材の為に、制度を変えられるかどうかです。

時短勤務という大きな変化でなくとも、小さなところから会社の様々な制度や待遇を見直すことで、採用はグッと変わります。

今回ご紹介した時短勤務希望者にとっては、給与水準はあまり重視していません。そりゃ、低いより多いほうがいい。でもそれよりも優先すべき条件が他にあったわけです。採用ターゲットが会社を選ぶ基準(優先順位)を事前に把握することで、求人広告のメインで打ち出すテーマも変わります。ぜひ、参考にしてみてはいかがでしょうか。

 

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