米国で激増する「配属先は後々採用」は日本で通用するか。

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何かと最先端のものはアメリカから日本にやってくる、なんてイメージがありますが、それは採用手法についても同じようです。米国では、近年の激戦化する新卒採用の新手法として、業務内容を具体的に決めずに採用し、社内で様々な業務に携わった後に配属先を決める「配属先は後々採用」なる手法(ネーミングは勝手に決めました…)を導入する企業が増えているそうです。

すでに日本人でもよく知っている米国の大手企業が続々とこの手法を取り入れているようです。そもそもの話ですが、新卒採用の場合であれば、中途採用と違い、経験や技術というよりも、将来性溢れるポテンシャルの部分を重視する傾向にあるのは、皆さんとしても納得感はあるでしょう。入社後は各部署をローテーションで経験し、将来の幹部候補として会社全体の業務を広く知っておく機会を得る。実にイメージしやすいと思います。米国でも同様に金融機関や老舗の大手企業であれば、ローテーション制を採用してきた歴史があります。しかし、ここから先が少しニュアンスが変わります。

 

配属先は入社後に決める。

日本的な発想でいえば(個人的偏見もあるかもしれませんが)、花形と呼ばれる職種や部署があります。それが会社によっては営業部第一課かもしれないし、マーケティング部や戦略企画部かもしれません。ローテーションを経て、最終的にはその花形部署へ配属していく。それが新卒組の目標であり、ひとつの出世(キャリアアップ)の目印になります。(ここまでは大丈夫でしょうか…)

しかし、今回の米国で導入し始めている採用方式は、もう少し柔軟性があります。つまり、花形部署なんてものはなく、事業も会社もサービスも時代とともに柔軟に変化していく。その変化の中でも高いポテンシャルを発揮し、アメーバ的な組織の中でも活躍してくれる人材を獲得したい。その為に、特定の仕事に固執するのではなく、柔軟に会社の戦力として羽ばたいてくれる人材を求めるという話なのです。

 

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求職者にとっての魅力とは。

さて、企業側の思惑はなんとなくはわかりました。しかし、これって求職者側からすればどうでしょう。入社後にどの部署で働くかわからない。自分の希望する部署で働きたいという夢が奪われる気分です。さらにいってしまえば、就職活動の時って、仕事内容や職種からセグメントし、エントリーする人が大半でしょう。そうなると、募集広告の段階で「どの職種になるからは入社してからでないとわかりません」なんていう但し書きが求人広告に必要となります。そこに不安感を感じる求職者も出てくると思います。

多角的な視野を持ち、会社の発展に柔軟に貢献できる人材。それはたぶん、とても素晴らしいゼネラリスト的人材でしょう。しかし「将来的には、営業職として活躍したい!」「将来は新製品の開発に携わりたい」そんな夢を最初から排除していく企業の姿は、あまり企業側としてプラスに作用するのか否か。

 

ちょっとここで小話をひとつ。

実際の現場で起こっているエピソードを紹介します。これはたぶんどこにでもある話でしょう。ある会社の若手社員の話です。

「私はマーケティングをやりたくて入社しました。入社してこれまで外回りの営業ばかりで、まったくやりたいことと違います。なので、辞めさせてもらいます。」

 

ある日、突然、将来有望株だった若手社員が辞めました。若手社員からすれば実際の仕事がイメージとは大きくかけ離れていたことに不満を感じ、早々に辞めていくわけである。しかし、現場の上司の考えはまったくそこにはありませんでした。“今は会社の仕事を覚え、3~5年くらいかけてキャリアを積み、十分に育った後にマーケティング部への異動を考えていた”それが上司(会社)の考えでした。

 

これの上司の考えに賛同する方は多いでしょう。しかし、これは結果論であって現実的には未知の話です。若手社員が上司の気持ちを100%汲み取って、その後も勤めていたとしても希望するマーケティングへ異動できるとも限りません。しかし、問題なのは別のところにあります。そもそもの会社の考えと若手社員(個人)の考えとが、最初からすれ違っていたこと。そこが企業にとっての大きな問題だったのです。

今回の米国で導入している採用プログラムはこうした、入社前のミスマッチを解消するために行われているといってもいいでしょう。どの部署が花形で、どの部署が左遷なのか。そんな次元の話は横に置いて、企業そのもののビジョンに共感してくれる人材を広く獲得していく。その中で、優秀なポテンシャルの人材を導き出して、適正な場所へと配属していく。この考え方をスマートと考えるか、難しいと考えるか。みなさんはどう思いますか。

 

今回はここまでにしますが、実はこの話、続きを書こうと思っております。それは「企業のファンを増やすこと」についてです。今回の採用手法を成功させるには、企業のブランド力が必要になってきます。「この企業で働けるなら、どの部署でもいい!」「この企業で働きたい!」そんな視点が求職者になければ、この採用は成功しません。つまりは、企業の魅力を高めて、発信していくという前提が必要なのです。

 

その辺の話はまた次回に。

 

 

 

 

 

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