採用について「考える会社」になっていくこと。

ある社内の問題について、ひとりの社員が悩んでいたとするでしょ。それをね、直属の先輩に相談するわけですよ。そしたらその先輩がどうするかといえば「上司に聞いてみないとわからないな」ってなる。

残念ながら、だいたいの場合がそこで自然消滅的に相談事を流されちゃったりするわけだけれど、それでもたまに運よくもう一つ上の課長だか部長にまで相談事が上がっていく。うまくいけば、次は統括マネージャーだか役員まで上がり、あれよあれよと雄シャケの産卵のように、上流へと「ある問題」が上がっていくわけです。

ここまでの話でも相当な労力と時間を要して、シャケでいえばもうアスタキサンチンの残量なんてほとんど残ってないわけですよ。でも我慢しながら待ってみると、最後には社長まで話がいく場合がある。

でもね、だいたい決まってこう言われるわけです。

「ほう、それは問題だ。この問題は社員たちの了解を得ないといけないな」って。

せっかく上流まで登ったのに下流へと放出される雄シャケの気持ち。僕はこれが心底嫌いなんですよ。一見、社員全員で考えて決めよう的な文化に見えそうで、実は社員の誰ひとり問題を考えてない。つまり「考えない会社」のシステムなんですこれ。

考えないから「採用」がうまくいかない

目に見えて売上に直結していたり、顧客クレームに繋がるような問題であれば、社員はそれなりに考えようとするわけです。特に顧客クレームの部類であれば、仕組みとして、誰かしらが解決するようなフローがある。

ただ、

あまり日々の業務と関係ないと思っていたり、知らないことだったりすると、途端に考えることが億劫になる。僕の勝手な見解であるけど、会社の中では社内のネットワーク関連(パソコンのソフトの導入)やらの話と、働き方改革に繋がる社内制度の見直し、そしてこと「採用」に関係することって、ホントに「考えないシステム」に陥りがちだと思ってる。

バカみたいな話だけど「採用に困ってる!」「従業員が辞めていく!」そんな重大問題がなぜ長年に渡り放置されてしまっているのか。

その原因は簡単な話で、データとか成功事例とか云々の前に「考えない会社」からの卒業なんです。

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考え方を学ぶ「採用学」のスタートライン

今、日本ではかつてない採用難の時代を迎えている。……というか、実はもうとっくの昔から迎えていて、考えている会社はどんどん新しい採用のあり方を研究して挑戦していて、実は採用に困ってない。もう彼らは働き方改革のオピニオンリーダー的なポジションにいて、彼らの今の「採用が困っている」問題は、もはや問題の質が全く違う。

次の時代を見据えている悩みなわけです。

メディアが毎日のように働き方改革の成功事例として、ニュースやコラムで特集するもんだから、採用で新しい取り組みをしている会社は、働きたい会社ランキングやらの上位に常に顔を出し注目度は増すばかり。

そんな時代の先端をゆく企業を、世の中の中小企業がこぞって「わが社でも導入するか」と試みるわけだけど、結局ね「考えない会社」であり続けたなら、根本的には何も変わらないし、何も成功しないんです。

新しい採用のあり方にどんどんチャレンジしていく一方で、同じだけ失敗も繰り返している。それでもまた次の知恵を絞ってトライしつづける。それが働き方改革の最前線です。

失敗と成功を繰り返しながら、その会社だからこそ馴染む採用哲学みたいなものを作り上げていくわけで、右へならへで導入したって実際は失敗することの方が多いんです。

つまり「考えつづける会社」であることが重要なんです。

育児休暇制度は客寄せパンダではない

では、考える会社とはいったいどういうことなのか。

働き方改革の元祖ともいえる「育児休暇制度」を例に考えてみてください。

僕の勝手な思い込みかもしれないけど、今じゃ、ほとんどの会社の求人票に乗っていますよね。でも、これって結構怪しい会社ありますよ。制度として明記はするものの、話を聞いていると未だかつて誰も取得したことがないなんて普通にある。現実に社員の誰かが制度を実行しようと試みるも、そもそもどうしていいかわからない。

挙句「前例がない」「まだ会社として受け皿がない」「時期尚早」なんて社長が言い始めて、結局社員がそれを肌で感じるもんだから「育児休暇制度」なんて話もどこへやら、自然といつの間にか社員が辞めていく。

当社に限ってそんなことはない!と自信を持って言えたなら、それは素晴らしいことです。しかし、現実としてそんな中小企業がいっぱいあることも事実です。

ここで考えて欲しいことは、形だけ真似ても意味がないんです。

世間の流れにあわせてお飾りで導入するのではなくて、一つひとつの制度や待遇を考えていかないと、会社で働く人はいつまで経っても働きやすくならないし、結局求人を出しても採用のアンマッチで辞めていくんです。

住宅手当にみる社長の器

もうひとつ例を。

ある会社で社長の一声で「住宅手当」を出そうという話になるわけです。その経緯も含めて社長に話を聞いていくと、とりあえず条件として「会社まで歩いてこられる人に限る」なんです。だいたい会社の半径500m圏内くらい。駅でいえば隣駅くらいまで。

では社長、いくらくらい手当は出しますかって聞くと、だいたい月に5000円~くらいっていうわけです。それって月の定期代なんですよ。交通費出すくらいなら、同じだけ払うから会社の近くに住んでもらった方が、何かと便利だとか、そんな次元の話になってくる。そんな社長の意図が瞬時に社員たちに伝わってしまう。

要は社員のことを真剣に考えてるわけじゃないんだなってバレるわけです。

社員たちはそんな裏側の思いを察しているわけで、運用しても誰も利用しない。誰ひとり会社の近くに引っ越してはこない。

渋谷のオシャレで資金力も豊富なIT企業とかの話じゃないんです。これがとある中小企業の現実なんです。採用をうまいこといかせたかったら、それは今の社員たちが「良い会社だな」って思うところから考えていかなきゃならない。

社員たちがウチの会社って良いよねってなってるなら、実は採用って思うほど苦労していないはずなんです。僕ら求人広告ライターも、社員思いの会社であるなら、採用のお手伝いをしていても、すごくやってて楽しいしやりがいも結果も良好なんです。

入ったら終わり。雇ったら放置。そんな採用はもう辞めましょう。

「考える会社」になれば、それだけで採用は自然とうまくいき始めます。考えない会社が考える風を装っても、うまくはいきません。内定出したところで辞退されますし、入社したってすぐやめます。

当たり前にあることを見直していく

最後にまとめとして私が言いたいのは、採用成功への切り札はそんなに特別な制度や待遇ではないってことです。どこにでもあるかもしれない制度や魅力をもう一度、考えてみてください。

私の活動である「正しい求人広告の作り方」にも通じますが、当たり前にあるものが、実は当たり前になく不完全で何の効果も発揮していないことが多々あります。その例として「育児休暇制度」かもしれませんし、他の待遇やメリットかもしれません。

社長はいろいろな待遇を用意していると思っていても、現実として使われずに終わっているんです。実は社員と経営者の溝の温床になっていたりもするのです。

会社としては様々な取り組みをしている自負があり、社長もご満悦、でも社員が定着しないし採用もうまくいってない。だんだんと社長の機嫌も悪くなる。

「こんなに制度を作ったりしてるのにうまくいかん。最近の若いものはまだ足りぬというのか」なんて具合に仕上がっていく。

でも違うんです。もっと深く社員と一緒になって会社のことを考えていかねばならんのです。それが「採用を考える会社」になっていくということです。

 

制度を導入して終わり

社員たちからの相談も放置

 

思い当たるふしありませんか?求人広告に書かれている待遇欄をもう一度見直してみてください。そこから社員たちの本当の声が浮かび上がってくるかもしれません。

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