近年急増するウソの求人、いわゆる「求人詐欺」に対する罰則化の動きが本格化した。厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会の労働力需給制度部会は7日、賃金などを含む労働条件を偽って求人を掲載した企業に対し、罰則を科すことを盛り込んだ報告書をまとめた。
劣悪な労働環境を強いる「ブラック企業」の存在は、何年も前から社会問題化している。中小企業で深刻化する「人材不足」から派生したのか、それともブラック企業化が、多くの就労離れを生んでいるのか。様々な考察はあるだろう。ただ、ブラック企業が生まれていく過程のなかに「求人詐欺」の存在が影響しているのは確かだ。
厚生労働省は報告書を踏まえて、職業安定法の改正案を2017年の通常国会に提出する。実際の賃金や待遇よりも良く見せようと、偽った内容で求人広告を掲載する「求人詐欺」の抑制に、今まさに国が本気で動き始めた。
求人広告はブラック企業を生みやすくしているのか!?
あえて私の立場から最初に言わせていただきたいのは「求人詐欺」のまん延は、日本の中小企業をブラック企業化させることに、大きく加担していることです。あとで説明していきますが、多くの求人メディアが「求人詐欺」を野放しにしているわけではありません。各メディアは厳しく掲載規定を設けて虚偽広告に目を光らせていますし、応募者ホットラインを設け、嘘の求人を掲載している企業には厳しく対処しています。しかし、そのすべてが対処できているわけではないことも事実です。長時間労働の末、残念ながら命を失ってしまう方がいる現実を、人材サービスに従事している人間はもっと深く考えるべきだと思っています。
企業が悪質であることを見抜けない。
訪問取材や社員インタビューをなど、企業の取材を通じて求人広告は生まれます。ほとんどの企業とのやり取りは好意的でありスムーズです。しかし、企業の内部まで深く裏付けを取っているのかと言われれば、そうではありません。取材内容にも細心の注意を払ってはいても、新聞社のような裏付けまで深く追求はしません。
もし、企業の担当者が嘘をついていても、求人メディアが事前に見抜くことはできないのです。嘘の発覚は、応募者が面接をしている時か、採用後に実際に働き始めてからになってしまいます。その点を後手と言われても仕方ない。それが現状です。
また、求人広告営業マンの質についても、少し触れたいと思います。身内の批判のようになってしまい心苦しいところですが、長年この世界で働いている私個人の見解として話をします。
残念ながら「求人広告」を金もうけの道具としてしか考えずに、虚偽広告でも平気で掲載している求人営業マンがいるのも事実です。取材をせずに適当に求人広告を作り掲載したり、応募の反響を確保するために、条件を誇張して掲載する者もいます。
これらも担当営業マンが「事実です。」と答えれば、それまでなのです。
罰則化が求人営業マンの「質」を上げるか。
企業への罰則化は、企業だけではなく、質の低い求人営業マンを減らす効果にも期待したいと思っています。今回「求人詐欺」について、私が一番に伝えたいことは
「求人広告で嘘をついても何ひとつ意味はなく、誰も幸せにはならない」ということです。
嘘などついても、一時の課題の先延ばしにしかなりません。一部の質の低い求人広告営業マンたちは、依頼主である企業から対価を得るために、嘘の応募効果を提供しているだけに過ぎません。企業が採用で、最大限のメリット(採用成功)を得たければ、嘘のない求人広告を掲載していくこと。これに尽きるのだと強く言いたい。
人材採用は人の人生を変えてしまう。
この言葉は、求人制作マンであれば誰もが一番最初に叩き込まれる言葉です。求人広告ライターの立場として、求人広告が誰かの命を奪うことに加担しているなんて現状は無視できません。今すぐにでも、その流れを止めたい。そして、正しい求人広告を掲載することが、もっと採用成功の確率が高いことも伝えたい。そんな想いで、今回のこの記事を書いています。
求人メディアは「求人詐欺」を野放しにはしていない
嘘の求人を掲載する企業に対し、求人メディアは何の対策もしていないのか!と言われれば、そうではありません。先ほども書きましたが、大手メディアでは独自に「広告作成ガイドライン」を作り、特に労働条件の箇所は、表現があいまいにならないように広告の表記を厳しく規定しています。また、各メディアにはそれぞれ「応募者ホットライン」を設け、広告と違う虚偽の条件を提示されたり、強制された場合にはすぐに対処する仕組みを導入しています。
このホットライン「本当に効果あるの?」なんて思われる方がいるかもしれませんが、どのメディアも応募者を第一に考えた対応をしており、悪質なブラック企業の場合は、今後の取引を一切停止する処置を取る場合もあります。
そもそも求人メディアにとって「求人詐欺」の存在にメリットなどありません。人を探す企業と求職者の双方に、満足のいく採用マッチングを提供していくことで、強いブランドを作りあげることが、求人メディアの最大の目的です。他の求人メディアよりも、自サイトがより採用に強いブランドだ!と言えることが一番なわけですから、嘘の求人などはメディアには何のメリットもありません。
「あのメディアは嘘の求人ばかり載っている」そんな悪いイメージが付けば、メディアとしては痛手です。全く事実と異なる求人で募集する企業は1件も出さない!そんな企業としての強い方針は存在するんです。
問題になってくるのは、採用の現場レベルで「求人詐欺」を行いやすくしてしまっている現状なのです。
罰則化の前に考えて欲しい、価値ある求人広告論
騙してでも入社させれば企業の勝ち!なんて話もありますが、はたして本当にそうなのでしょうか。確かに、いまだにブラック企業が横行していることは事実です。それに対する罰則化の動きには賛成です。労働者の人生までも奪っていくような悪質な企業には、厳しい処置をすべきでしょう。
ただ、それでは根本的な解決にはなりません。
なぜなら、多くの企業がブラック化に走った根底には「経営を維持したい」「雇用を確保したい」つまり「人材を採用したい」想いがあるからです。
人材採用の成功。この課題を解決していくことが、ブラック企業を減らす上で重要なのです。ブラック企業撲滅の動きは、人々の就業に対する気持ちを大きく変えてきているように感じます。ブラック企業には勤めたくない!我慢して働くべきじゃない!そんな空気のある社会になっていくでしょう。問題は、そんなブラック企業を排除する社会を迎えてきた今、誰も働きたくないブラック企業は倒産させればいいのか、それとも「再生」すべきなのか。どうブラック企業を救っていくかなのです。
この採用支援サイトが生まれた背景には、求人メディアに従事している私自身が、あまりに解決できていない現状に責任を感じ、自分が表に立つことで、正しい採用ノウハウを先頭に立って発信していこうという想いがありました。ブラック企業を「再生」する。健全な採用のあり方を、もう一度やり直して、最高の採用マッチングを提供する。これがこのサイトの目的でもあります。
嘘のない広告作りの中から、企業の魅力を探り、それを情報誌から広告へと進化させてながら、正しい採用を行っていく。求人広告ライターとして、自身が培った採用ノウハウを皆さんに伝えていくこと。それが「求人詐欺」の撲滅に繋がっていければ嬉しく思います。
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